ノージックの晩年についてまとまった文献があれば教えてもらえませんか?アナーキー国家ユートピアの後、政治哲学を離れて、晩年には相続税の強化を主張してリバタリアニズムを否定した。というような解説を図鑑で読み気になりましたです。又、別の質問ですが、実際ノージックはリバタリアニズムから脱却したのですか?それとも最小国家より少し後退して単に相続税の強化を主張しただけ?(相続税の強化だけを理由にアンチリバタリアニズムというなら森村進はどうなるのでしょ…。)

.ノージックだからといってアナ国ばっかり論じるのは芸がないぜ、ということで最近はそれ以降の著作にも焦点をあてる研究書が何冊か出ています。ただ、後期の認識論的な仕事などは、それはそれで検討に値するものだと思うのですが、リバタリアンな政治哲学との関係がどうかはよくわからないので、どの本もそんなに突っ込んで書いてない印象です。
.ノージック自身の著作で多少、政治的なことも書いてあって、しかもあまりリバタリアンぽくない本としては 'The Examined Life,' 1989(井上章子訳『生のなかの螺旋――自己と人生のダイアローグ』青土社、1993年)があるんですが(ここに相続税の話あったかな??)、これはどちらかというとかなり一般向けのゆるい哲学エッセイといった感じで、特に体系的でもないので、ここに書いてあるリバタリアンぽくない話でもって「転向」うんぬんしても仕方ない感じ。それ以外の本でもそれはほとんど書いてありませんので、後期ノージックの政治哲学的立場は「よくわからない」し、ロールズのように体系的な著作を残していない以上、立場が変わったかどうかにたいした意味はない、と思っています。
.ノージックの伝記的な話としては、そもそもあんまりリバタリアンとか考えてる人ではなかったようですね。学位論文は科学哲学者カール・ヘンペルのもとで 'The Normative Theory of Individual Choice,' 1963 というものを書いていて、これは題名から想像されるほど normative なものではなく、ヘンペルの議論(選択の「科学的」合理性うんぬん)を批判的に継承するものだったようで(未読)、後の 'The Nature of Rationality’, 1993 につながる話みたいです。
.政治的なことについては、当時のノージックははっきり社会主義への傾倒を示していたようで、著作として残してはいませんが、ノーマン・トーマスとかが活躍していた当時のアメリカ社会党(Socialist Party of America)に参加していたとのこと。しばらくはゴリゴリとそんなことしていたようですが、やがてブルース・ゴールドバーグとかマリー・ロスバードといったリバタリアン or アナーキストと個人的な親交をもつようになって、なんとかこいつらをやっつけてやろうと頑張るようになったんですが、最終的にはやっぱこれいいじゃん、という感じで「転向」してアナ国を書いたとのこと。でもなんかノージックとしてはこれはそのへんのサークル活動にケリをつけるための単発的な仕事という意識が強かったらしく、「続編」みたいなものを書くつもりはまったくなかった、自分はもっと哲学的なことをしたかったんだ、なんてことが最晩年の 'Socratic Puzzles,' 1997 には書かれています。なので、ノージックのキャリア全体からすればむしろアナ国だけぽかっと浮いてる変な本、ぐらいの捉え方のほうがいいのかもしれない。
Liked by: CapitaF
❤️ Likes
show all
CapitaF’s Profile Photo

Latest answers from

岡口裁判官によって柳は迷惑かけられてるの?柳は法曹じゃないから関係なくない?

.まあ、本名で SNS やることのリスクが間違った感じで広まってしまったというか。

大学から人文系を無くせという声はあるが、数学を無くせという声はあまりないのはなぜでしょうか。数学の研究は、直接もしくはすぐに役に立たなくても必要だと思われていて、他分野や社会から一目置かれている。人文系もかつてはそうだったはずで、それが変わったのはいつごろで、なぜそうなってきたのでしょうか。

.入試科目として数学が重要になったから、数学なくせなんていうとバカっぽく思われるからじゃないかな。文系科目は誰でもそこそこできるので0点はないけど、数学はコンプレックス刺激しやすいし。あと、もともと数学のポストなんてほとんどないけど、人文系は大学の拡大とともにどんどん増えたので、いろいろ恨みも買っているのだろう。

ここ数年ヤクルト村上が不振なんだけど、これは柳もまた村上ファンを公言できるのでは?

.あのホームランがいいのであって、打たない村上なんか知らんわ。

こいつまじで馬鹿だなって思ってもらって、それで出てってくれるならそれでもいいんだけど?

.出ていかないっしょ。あーこいつ馬鹿だなーと思われながら表面上で言うことだけ、みたいになる。人を出ていかすのはとんでもなく難しいんだから、入れた以上は力を生かしてもらうように工夫しないと仕方がない。

職場の院卒の若手が全然使えないです。机上の学問は実務じゃ通用しないんだよってマウンティングしてもいいですか?

.うわこいつマジで馬鹿だなって思われるだけだよ。

柳は新書とか書く予定ある?これから出す単著のエッセンスだけ抽出した初心者向けみたいなやつ

.日本語で一般向けの仕事をするインセンティブがとことんなくなっているので、そんなゆるいものは書かないと思う。

「講談社現代新書を書くのに向いてそう」は文系研究者が言われるのは嬉しいですか?

.講談社、中公、岩波だったら悪口とはそうそう思われないんじゃないか。

三権分立における司法権の独立って観念的過ぎてこういう事態にきめ細やかに対応できないよね

.そんなの自分が観念的にしか理解してないからだよ。弁護側の主張を読むだけでも、賛否はともかくいろんな論点がある。

裁判官って停職や減給ができないから何かやったら弾劾裁判で罷免するかしないかってなっちゃうのだろうか。

.日本の制度上はそう。アメリカではそれが問題になって、連邦裁判官の場合、連邦裁判所内で懲戒の手続きがいろいろ作られた。でも身内に甘いことが問題になって結局、弾劾になる例が最近は目立っている。しかし、連邦議会(特に下院)も弾劾は最後の手段と考えていて、担当の事件に直接関係する非行(賄賂とか)でなければ最終的な弾劾には至りにくい。どや、詳しいやろ。

おじさんは「侮辱したな!法廷で会おう!」みたいな心境になることってないの?もしあるとしたら、それはどんなとき?

.おじさんじゃねーし

Language: English