日本は右傾化していると思いますか?

 まず政治状況を考えると、確かに自民党が選挙で圧勝したり、安倍内閣の支持率が高かったりしますが、それは別に「右」っぽい政策が支持された結果ではあまりないでしょう。消極的には民主党がぐだぐだになったこと、積極的にはアベノミクスが今のところうまくいっているように見えること、などが主な要因だと思います。だから、経済状況や野党再編の状況次第ではどっちにも転ぶ程度のものでしょう。憲法改正とか集団的自衛権の容認とか、いかにも「右」な政策は、さほど関心を引いているようには思えません。
 もちろん、生活保護法改正とか、個別的にみればいろいろありますが、さほど大きな流れにはなっていないように思います。各種のデモのような形で、若年層を中心にそれに対する反対運動がこれだけ盛り上がっていることを考えてみても、決して悲観すべき状況ではないでしょう――もちろん、それが現実の政治的意思決定にあまりつながっていないことは問題で、そうした運動を実効的な権力にまで「育て上げる」戦略がないことはどうしても気にかかります。単独のイシューごとに盛り上がってすっきり、というのはそうしたカジュアルな運動のいいところでもあるのですが、あまりそれを繰り返していてもかえって無力感を募らせることになりそうです。
 ほか、自民党よりも「右」ということであれだけ警戒されていた橋下徹氏と維新の会がもはや政治的プレゼンスをまったく失っていることも「右傾化」に疑問を抱かせる材料のひとつです。また、先の都知事選で田母神氏が若年層を中心にけっこうな票を得たことなどはやや気になりますけど、あれも他の候補のアジェンダ・セッティングが稚拙だったことへの消極的な批判票という程度ではないかと思います。むしろ、若年層の側で「逃げ切り」に歯止めをかけるだけの運動を組織できておらず、ただ消極的な批判にとどまってしまうことのほうが深刻な問題であるように思います。
 
 言論状況(主にネットでの)に目を向けてみると、いわゆる「ネトウヨ」的なものは、「2ちゃんねる」が隆盛をきわめていた2000年代前半のほうがずっと激烈なものだったと思います。その後、ネットでの言論の中心がブログやツイッターなど、匿名性の弱いものに移っていくにつれ、一般レベルでも左派的な言説のほうが目立ってきつつあるように思います。これには311以後の「専門家不信」のような状況ももちろん関係していることでしょう。
 インテリ層に限るとこれはもう顕著で、現在、保守論客で支持を集めている人は、ほんの10~20年前と比べて激減していると思います。実際、たとえば憲法(96条)改正、特定秘密保護法制定、原発再稼働のような大きな問題から、NHK経営委員の資質、「人工知能」学会誌の表紙のジェンダー問題、ブラック企業をめぐるいろいろなど、およそあらゆる社会問題について、「右派」的なことを表立って主張するのはおそろしく勇気のいることになっています。「左派」的な「正論」のほうが、たとえどんなに水準の低いものであってもずっと通りのいいものになっている――それは左派知識人にとって相当に不幸な状況だと思います*。
 
* 具体的には、たとえば「立憲主義」についてここに書いたようなことなど。
 http://ask.fm/tkira26/answer/107631684583

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halt@yuanshanlong