応報刑ルネッサンスとは何ですか?

.「教育刑」にあまり効果がないにもかかわらず、なぜ「厳罰化」は進むのか?という問題へのひとつのアプローチと思ってもらえればよいかと思います。
.これは刑罰の目的論にかかわるもので、1970年代以降、アメリカやドイツの刑法学で盛んになっています*1。刑罰は単なる応報ではなく、再犯防止とか本人の更生のための「教育刑」的なものであるべきだ、という前提がそれ以前は強かったのですが、それがどうも科学的にはあやしい(あんまり矯正効果がない、むしろ逆効果である)場合が多い*2、というのが犯罪心理学や犯罪社会学の知見の蓄積とともにわかってきたと。そうすると無意味な刑罰は軽くして、代わりに「治療」的な措置をとるほうが有効だ、となりそうなものです。しかし、それに反して「厳罰化」要求の高まりはとどまるところを知らない。さて、これをどう説明したものか、ということでひとつ有力な流れとして「復活」しているのが応報刑論ということになります。これもただ応報というだけでなく、社会的流動性の高まりに伴う遵法主義(legalism)とか、社会的な規範意識の引き締めとか*3、被害者感情の満足とか、いろいろなサブ説明がなされています。
.それに対し、犯罪者を物理的に(そして象徴的に)「排除」することが厳罰化の眼目であって、それは地域共同体の包容力の低下に伴うものであり……みたいな説明もあり、まあ、それぞれ両立したりしなかったりしつつ熱いテーマになっているところです。

*1 ドイツについてネット上で読める論文として以下など。
飯島暢「最近のドイツにおける規範的な応報刑論の展開」、香川法学26巻3/4号、2007年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006426323
*2 犯罪類型ごとに細かく分ける必要がありますが、たとえば性犯罪の多くは刑罰による矯正効果があやしいものの典型とされます(ちゃんとした治療プログラムの対象とすべき、など)。一方、交通犯罪などは厳罰化の効果が現れやすいものといえます。
*3 簡単にいえば見せしめ、難しくいえば「法確証の利益」などといいます。

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