「弁護士や役人にならない限り、法学部の勉強はやくにたたない」と主張する法学部生をこれまで少なからずみてきたのですが、このような考えについてどう思いますか?

.そういうイメージで「法学部離れ」が進んでいるとしたら残念ですねー。まず、法律を使うかどうかということでも、いまどきまるっきり法律を使わない仕事はとても少ないのではないかと思います。世の中は見かけ以上にいろんな法律でいろんなことが決まっておりまして、その解釈に慣れているかどうかというのはかなり多くの仕事で重要な資質になるはずです。
.また、働くうえでの「ルール作り」というのも大事なことで、組織運営とか、契約のいろいろとか、法的にきちんとしておかないと危ないことになるものはたくさんあります。ちゃんとした企業だったらそこは「わかってる」人が担当するわけですが、法学部離れが進んでそのへんに慣れた人材が供給されなくなってしまうのはかなり危なっかしい事態ではないかと思います。実際、いろんな会社の規則とか読んでみると、あ、これ法律に親しんだことある人が書いたな、というのは一発でわかるものです。
.そして、直接にお仕事に使うのとはまた別に、労働者として働くにあたっては労働法の知識でもって自分や仕事仲間を守ることも大切です。これは「労働法」という科目そのものを学んでいるかどうかは別として、法的なものの考え方を身につけているかどうかでかなり違ってきます。

.以上はかなり具体的な話ですが、もうちょっと抽象的にいうと、「三手の読み」みたいなもののトレーニングにも法的思考というのは役に立ちます。1) こちらはこうする、2) するとあちらはこう出る、3) そこでこちらはこう対応する、というわけです。コミュニケーションの基本といってしまえばそれまでですけど、この 2) の部分の読みがいちばん大切なわけですね。ここで自分勝手な決め付けをしてしまうとどうにもならなくなる。コミュニケーションには必ず「相手」がいて、その相手は法律を含む一定のルールのもとで行動しているわけです。
.そこの「ルールのもとにある相手の(一定の)合理的な行動」を、変な価値観を入れないで的確に予想できれば交渉の「やり手」になれますね。法律学では、↓でお答えしたように、そんなふうにまず自分を殺して「if」を考えるトレーニングを徹底的にやります。なので、およそ対人関係にかかわる仕事につく以上は、こうした法的思考というのは最重要なもののひとつ――もちろん、それ「だけ」でもダメですが――になると思っています。
http://ask.fm/tkira26/answer/110211685863
.こんなふうに「相手」を尊重し、その行動や心理を予測する術としても法的思考はとても有効です。だから身につけておくとただ仕事ができるだけでなく、モテたりもするかもしれませんね。あれ、最後にいきなり説得力がなくなりました。どうしよう!

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