木村草太さんみたいに法学界隈出身で(時事問題などについて)盛んに表立って発言する知識人がもっといて欲しいなぁと個人的な好みで思うのですが、社会学者や文学者に比べるとあんまり目立つ所には出てきにくい印象があります。何か理由はあるのでしょうか。出てくる人と出てこない人の違いは何なのでしょう。別にそんなことないよという場合、他に誰か注目すべき法学者はいますか?

.憲法学者は伝統的に、時事問題について積極的に発言する方が多いのではないでしょうか(木村さんの場合は従来の枠を超えた活躍ぶりですごいと思いますが)。あとは「武器としての~」シリーズで人気の瀧本哲史さんも、元々は民法の東大法学部学卒助手という、法学アカデミックキャリアの本流どまんなかにいらっしゃった方です。他にも、twitterやブログでいろいろ発言されている方は決して少なくないと思います。実務法律家の方も含めればその数はずっと多くなります。法哲学だと、井上達夫先生は時事問題にも積極的に発言なさっていますし、大屋雄裕先生の各メディア(とりわけネット上)での影響力もすごいですね。そこに並べるのはさすがにおこがましいのですが、私もtwitterやこのaskでたまに変なことを書いたりしています。
.とはいっても社会学者や文学者に比べて「目立つ」方が少ないのは確かにそうで、特に実定法の方で一般向けに発言される方は少ないですね。これはひとつには、実定法を前提にした議論はどうしてもなかなか一般にすぐ伝えるのが難しい――理解するのに相応の知識と訓練が必要――というのもありますし、そこで頑張ってもアカデミックな業績にはなりにくくインセンティヴも生じにくいという問題もあるでしょう*1。現状は個人的な使命感(?)任せの部分が大きいのは否めないと思います。
.もちろん、法的な素養を持った方が発言することが有効な場合も最近は多いですので*2、もっとたくさん出てくればいいだろうと個人的には思っています。とはいっても現状、たとえば情報法や知的財産法みたいな先端的な分野だと専門家による発言もそこそこ多いですし、クローズドな場所(研究会、facebook、各種メーリングリストなど)だと日夜ものすごい議論が繰り広げられています。だからそういうのがだんだん表に出てくるのもそんなに遠い将来ではないはずです。
.というか「法学部離れ」が喧伝される昨今、そうした形で法学の魅力を社会発信するのが死活問題になることは確実といっていいでしょう。そこにおいて法哲学は、媒介者というかインタープリターというか、社会的ニーズと法学の議論をうまく「つなぐ」役割を担うのが重要になってくるのではないかなあ、と個人的には考えております。

*1 もちろん社会学とかでもアカデミックに評価されるわけではないでしょうが、マーケットの特性として、非アカデミズムへの広がりが十分にあるという事情はあると思います。
*2 最近はELSI(Ethical, Legal, Social Issues)とかいって、いろんな社会問題、とりわけ先端的な科学技術がかかわるものについて、法制度的視点が不可欠であるという認識が広まりつつあります。

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