橋下知事は文楽をつまらないと一蹴し、大阪府からの文楽協会への補助金をカットしようとしました。一方で東日本大震災時、宮城県は女川町で獅子振りという獅子舞で励まし合い団結して復興の取り組みに繋がりました。憲法は芸術や文化を保障することに対してはどうなんでしょう?また文化を保障する法律についてどう思われますか?

.憲法上の議論としては、「文化権」概念を確立しようというのがありますね。不当な行政的介入から逃れる(自由権的文化権)一方で、もっと積極的に公的支援を求め、文化を享受する権利としても位置付けようとするような(社会権的文化権)*1。根拠としては13条の幸福追求権で考えたり、あるいは25条の生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)の「文化的」に着目するものなど。他にもいろいろアプローチがあって、たとえば政治哲学でいう多文化主義を実定憲法上の話に接続するにはどうしたらいいか、といった観点からの議論もあります*2。
.といっても文化権とか多文化主義といった大きな話とはまた別に、このへんの分野はもっと地道な政策論の積み重ねが進んでいる感じです。たとえば、文化芸術振興基本法が2001年に制定されて、その後、各自治体での現場レベルでの取り組みがいろいろ進んでいます。このへんは文化政策論とか文化資源学といった分野での事例研究がたくさんあります。
.私自身はできるだけ市場競争に任せることによってこそマイナー文化も花開くと考えていますので*3――実際、ネットのおかげで復活したものはいっぱいあるでしょう――公的支援は限定的であるべきだと考えています。とはいってもまあ、ひとくちに文化政策といっても内実は本当にさまざまでして、支援のあり方も細かく見ていく必要はあろうかと思います。リバタリアン的な最低限の社会保障を考える場合、単にベーシック・インカムとかにするよりは文化政策的なものを通したほうがより実効的になる場合も(私自身は懐疑的ですが)あるかもしれません。その場合でも、行政の介入的性格を弱めるために、支援先を選ぶにあたって第三者委員会みたいなものを作ってその自律性を尊重するとかいったやり方もあります。

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*1 文化資源学からの包括的な考察として、小林真理『文化権の確立に向けて――文化振興法の国際比較と日本の現実』(勁草書房、2004年)など。憲法での議論状況については、正木桂「文化権の憲法上の根拠に関する一考察――憲法的議論の困難性から出発して」(文化政策研究3号、2009年)など。
*2 浦山聖子「民族文化的少数者の権利」(愛敬浩二編『人権の主体』(法律文化社、2010年))
*3 このあたりの最もリバタリアン的な楽観論として、森村進「グローバリゼーションと文化的繁栄」(人文・自然研究4巻、2010年(森村進『リバタリアンはこう考える』(信山社、2013年)に所収)など。
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/18339

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