13条の幸福追求権で個別的自衛権を正当化する議論って色んなところで茶化されているのを見かけるのですが、何がそんなにいけないのでしょう。自分がはじめてその解釈を聞いた時はなるほどと目から鱗が落ちてこれで自衛隊違憲説なんかの説得力もおしまいだと納得してしまったのですが、法学の常識感覚に反しているのであれば是非ご指導ください。

.(1) まず形式的なこととして、13条のような一般条項から自衛権なんていう具体的なものをいきなり引き出すのは解釈論として荒っぽいというのがあります。(2) それにいわゆる「新しい人権」のように幸福追求権の一部として解釈できるものであればまだしも、自衛権はその基礎を保障するためのものという話なので、議論の種類がまったく異なる。もうちょっと合わせ技を使うか、開き直って国家固有の権利とするか、何か工夫が必要なところです。
.また、より実質的な議論として、(3) 幸福追求権は国家からの妨害を排除するという消極的な権利であって、その実質的な基盤保障まで国家が積極的に担っているとするのはいかがなものか、ということもあります。各種の社会権のようにそもそも国家に請求することが予定されているものであれば話は違いますが、自由権についてまでそう考えると国家によるパターナリスティックな介入が相当に広範に認められてしまう。そして、(4) 表現の自由とか信教の自由とか、他の自由権でどうなるかがあまり考えられていないように思われる点で、法解釈にとって一般的に重要とみなされる体系性・一貫性が犠牲になっているように思われる。
.といったふうにいろいろな難点があります。おそらく (1) (2) (4) については「ちゃんとする必要がある」ということで「法律家共同体のコンセンサス」がおおむね得られると思いますが、(3) は憲法観の根本的な対立を含んでいるので厄介です。これはいわゆる基本権保護義務論の賛否にもかかわってきます。端的にいえば、国家権力の抑制を旨とする立憲主義理解をする論者が、国家権力の拡大へとつながる議論をするのは相当に問題含みではないか、ということです。このあたりは話が長くなってくるので、以下の高橋和之先生の議論などをご参照ください。
http://www.law.kyushu-u.ac.jp/programsinenglish/asianlaw/japanese/nichu/repo/111.pdf
.こうしたことを踏まえたうえでなお、13条で個別的自衛権、というのであれば真摯な議論に値すると思います。

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