@chanmog_kimpo

もぐ

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もぐさんがたまにツイートする石かりがものすごくツボなので大将一本頼む

昼でもあまり光の差し込まない、暗く日当たりの悪い部屋だった。
「カーテン開けるよ」
「ああ」
あまり頓着がないのだろうか、それとも誰かから譲り受けたのか男の一人暮らしにはそぐわない煤けたピンク色のカーテンを青江は開けた。隣の古いビルとの距離が近く、覗き込めば部屋の中まで見えそうであった。
「眩しいな」
「今日は曇りだよ」
「そうだった」
万年床の布団の上にいくつも落ちたちぐはぐの靴下がミイラみたいに転がっている。
「君って思ったよりだらしないんだもの。驚いたよ」
「男の一人暮らしなんてそんなものじゃないのかな」
「君は特にひどい」
「それは申し訳ない」
石切丸はちゃぶ台の上に置いた灰皿をちゃぶ台ごと引き寄せた。こんもりと溜まった吸い殻の中からまだ吸えそうなものを見繕って、スナック次郎と書かれたマッチで火をつける。肺まで吸い込んで、うまそうに煙を吐き出した。
「青江は吸わないんだったな」
「僕は吸わない」
青江は今更咎めもしなかった。白い煙が広くない部屋に充満して目に染みる。座るのもどこか気が引けて立て付けの悪い窓をようやく開けた。むき出しの青江のくるぶしを石切丸の冷たい手が慈しむように撫でた。
「どうしたの」
「いい骨の形だったんだ」
「言い訳にしては歯切れが悪いよ」
されるがままにしておく。くるぶしが仄かに温かくなってくる。
「君と私が一緒に住めば今よりもきっとましになるさ」
さっきよりもずっと歯切れの悪い言葉を煙ごと吐き出した石切丸のつむじは、この日の当たらない部屋でどこよりも生白く蠱惑的に過ぎた。
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1月に頂いたホンコン焼きそばめっちゃ美味しかったです(((o(*゚▽゚*)o)))ありがとうございました。ホンコン焼きそば×刀がよみたいです!

料理らしい料理を作れない長谷部が、一つだけ得意としているものがある。それがインスタントラーメンだった。水加減の具合や麺を湯から上げるタイミングといい絶妙で、これだけは料理上手の燭台切よりもうまかった。
「どうしたんだ、これは」
「お土産でもらったんだ。限られた地域でしか販売されていないらしいよ。知ってる?」
「昔よく食べた」
そう言って燭台切から渡されたホンコンやきそばと書かれた袋には胡散臭いコックが描かれている。中には味の付いた麺に青のりしか同封されていない。
「やきそばの匂いはしないね」
「ああ、これはホンコンやきそばだからな。やきそばじゃない」
「作るの?」
言われて頷いた。
フライパン一つで出来るホンコンやきそばは簡単だが少しコツがいる。200ミリの水をきっちり軽量カップで計る。几帳面だねと言われてお前に言われたくないと思ったが長谷部は黙っていた。
「僕初めて見た。面白いね」
200ミリの水はすぐに沸騰する。麺をそのままフライパンに開けると、少し両面を湯に浸し菜箸でまだ固い麺を強引にほぐす。
「へえ、まだ固いのに?」
「まだ固くないとだめなんだ」
「ふうん」
フライパンを覗き込んで燭台切が興味深そうに顎をさすった。皿でも出しておいてくれ。はーい。
ここからは時間勝負だ。麺をおおかたほぐし終わると、三十秒ほど待つ。そのまま平皿に開けた。青のりのフィルムを切って振る。
「出来たぞ」
「これでおしまい?」
「そうだ」
燭台切の方に差し出せば、食べていいの?と聞かれて頷く。立ったままじゃ行儀が悪いよね、秘密にしてねと言いながら燭台切がホンコンやきそばに口をつける。
「…どうだ?」
「うーん、食べたことない味かもね」
何だその意見はと思って顔を見ると燭台切は長谷部の不満そうに結んだくちびるに口付けた。
「でも僕は好きだよ」
ぺろりと舌に舐められたくちびるが冷える。
「あは、長谷部くんに青のりついちゃったね」
青のりを取ろうと伸ばした燭台切の形のいい指を、長谷部はふんと笑ってしゃぶってやった。

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大倶利伽羅のどこかしらを開発する受光忠お願いいたします

こめかみから流れる汗がじっとりと肌を湿らせた。大倶利伽羅の食いしばった歯が磨り減る音が聞こえる。
仰け反った喉にくっきり描かれた凹凸に軽く歯を立ててやると、大倶利伽羅は普段の姿からは想像もつかない愛らしい声をあげて鳴いた。
「すっかりここで気持ちよくなれるようになっちゃったね」
マドラーのような細い金属の棒が大倶利伽羅の小さな尿道の中にずるりと入る。軽く抜き差しをしてやるとすすり泣くような声が漏れた。
寝かせた大倶利伽羅の体の間に腰を入れ込んで笑う膝を抑える。
暴れたら危ないよ。痛いの苦手でしょ。そう言うと体が一気に強張った。力抜いて。そう。上手だね。汗でぐっしょりと濡れた髪を撫でると、無意識なのか燭台切の手に大倶利伽羅が額を擦り寄せた。
「光忠、でる、もう、でる……」
うわ言のようにくちびるから溢れる声を燭台切はだめだよと優しく突っぱねた。
金属の棒は大倶利伽羅の痛かったはずの尿道を中から犯して、勃起したそこは先走りで溢れて濡れている。
「光忠、やめてくれ…無理だ…」
「無理じゃないよ」
三分の一を残して全て埋まってしまった金属の棒は、燭台切が手を離しても中から出てくることはない。かえしが付いているせいで抜けもしない。
ましてや大倶利伽羅の震えた指では自分で抜くこともかなわないだろう。
「光忠、光忠…みつただ…」
燭台切は足の間で大股を開いて喘ぐ大倶利伽羅を上から見つめる。あどけない顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。
「じゃあちゃんとごめんなさいって言える?」
言える…言えるからやめてくれ…やめてくれ…と懇願する大倶利伽羅の謝罪の言葉は燭台切の口へ飲み込まれて、気付いた時にはきっと肚の中だ。

燭台切とへし切が今のところ単体で好きなんてすが、もぐさんにとって二人はどうですか?かけれますか?

どこか潔癖にも見える長谷部の服を脱がすのが好きだ。
几帳面に上まで止められた釦を一つずつ外す。されるがままにそれを見る長谷部の顔はあくまで無表情で感情の起伏はそこから読み取ることが出来ない。僅かに走る行為の前の緊張感に燭台切は密かに背筋を戦慄かせた。
「長谷部くん、キスしてもいい?」
返事はなかった。微かに尖らせたくちびるの先を舌を伸ばして舐める。
「まだ何も言っていないぞ」
「返事がないのはいい返事の証拠だって」
「誰が」
「僕が」
鼻で笑った長谷部の吐息がまつげにかかる。もう一度くちびるを舐めると薄くくちびるが開けられた。眼帯を外そうとする長谷部の手を軽く避けた。
「だめだよ」
「中が見たい」
「あとでね」
外した釦はまだ四つだ。残った三つがやけに遠いのに、外してしまうのはどこか勿体無い気がしている。
「眼帯を外されたら止まらなくなっちゃう」
それがいいんだという声はどこか笑っている。長谷部の獰猛な破片を拾うためだけに、お預けにした眼帯の下には欲望以外は何もない。
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今とうらぶのヤクザパロを主食に生きているんですけど伊達組のヤクザパロありますか?

腕に嵌めたウブロの時計をちらりと見た。もう十五分も経っている。吐き出した自分のため息が幾分すり減っているのを燭台切は感じた。
「あんまり時間がないんだよね」
畳二畳分ほどのベニヤ板に打ち付られけた男は、人というよりは赤い肉の塊だ。その中で口らしき場所をぱくぱくと何度も開いたり閉じたりしている。手足に打ち込まれた太い杭は所々が錆びていて古い。下に溜まった血は赤黒く固まり始めていた。
「喋ったほうが身のためだと思うんだ。プライドとかそういうものがあるならよした方がいい。そんなものは生命の重さに何の関係もないし、僕が君を見逃す理由にはならないんだよ」
銀色のケースから取り出した複数の形状をしたナイフはまるで医療器具のようだった。その一本を燭台切は丁寧に取り出した。
「アキレス腱を切る音を聞いたことがあるかい?」
男の口や鼻と思しき場所からは赤い泡が吹き出している。呻き声の中からやめてくれという力のない言葉が辛うじて聞こえた。ナイフをふくらはぎにあてる。
「ねえ、誰が僕たちのことを喋ったのかな?」
返事はなかった。
ブツリ。
硬いゴムが切れるような音とけだものの咆哮がする。
その瞬間両手に血を滴らせた日本刀を携えた目の焦点の合わない男が部屋に入ってくる。
「長谷部くん、まだだよ。まだだ。これから彼にもう少し聞かなくちゃならない」
長谷部と呼ばれた男はゆらりと頭を燭台切の方へ向けた。彼の美しい目や鼻や口といったパーツは原型を留めないほどに醜く歪んで、裂けたくちびるはにたにたとした笑い顔を浮かべたままである。
後を追うように部屋に入ってきた大倶利伽羅は息を切らしながら燭台切の肩を叩く。
「光忠、もう無理だ。あいつはもうまともじゃない。ここにいる残党は全部死んだ。あいつがやった。時間がかかりすぎた」
「だから言ったのに…」
燭台切は頭を抱えた。
何も吐かなかった男は、正気を失った長谷部から今度こそ原型を留めない肉の塊にされている。
「…光忠、そこの男が何も知らないことをお前は知っていたんだろう」
抱えた頭のその指の間から、むせ返るような臭気を放つ狂犬の姿を見た燭台切は今度こそ笑った顔を隠しもしなかった。

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くりみつですか?みつくりですか?

くりみつくりかな… いつものパターンだよ…

悪い大人(任意の刀剣)に騙される大倶利伽羅あります?

燭台切の服の裾を掴んで引く。それは控えめで弱い力だ。何に遠慮しているのかは知れないが大倶利伽羅は週に二度ほどそうやって燭台切の服の裾を引く。
「いつものやつを、してくれ」
切羽詰まった顔に差した僅かな赤に口角が上がるのを押し殺す。
「いいよ」
布団敷くから待ってね。ああ。もう湯は使ったの。ああ。準備いいね。別に。恥ずかしいの。…別に。大倶利伽羅の少ない言葉は意外に雄弁だ。日に薄く焼けたつむじのまだほの赤さに舌舐めずりをした。大倶利伽羅は畳の上に布団が敷かれるのをじっと待っている。
「これでいいよ。おいで倶利伽羅」
布団を敷いてしまうと燭台切が大倶利伽羅に手を伸ばした。もう何度もしているくせに躊躇いがちなのが可愛いと思う。
いいこだねと頭を撫でればそういうのはしなくていいと手を払い退けられた。
薄い羽織を脱がすとまだ湯でしっとりと濡れた肌が表れる。
「…本当にこれで強くなれるんだろうな」
「勿論だよ。僕が嘘ついたことなんてあった?」
「…嘘じゃないならいい」
何も付けていない下肢に手を伸ばしながら燭台切は、嘘をばらす一番美味しい時期を考えて真っ赤に熟れた口の中を肉に絡みつかせている。
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マスター、加州清光の夢小説をひとつ頼む

布団に潜り込んだ人肌の感触で目が覚めた。手を動かすと背中から腕が伸びて指先を握りこまれる。少し冷えた手のひらのまめの硬さを指でなぞるとくすぐったいと声がした。体を声の方へ向き直し暗闇でまじまじと顔を覗き込む。ああ清光かと声をかけると
「起こしちゃってごめんね主。俺眠れなくって」
少し掠れた声がそう返す。熱い吐息が寝起きの鈍感な皮膚を産毛を逆なでする。手を握ったままの清光がその指先を自身の着物の合わせに誘い込んだ。肌はしっとりとしていたが、撫でた腹は硬かった。女のものではない。しかし男のそれとも遠い。明かりのない中でも瞬くまつ毛が見える。
「そんなことどこで覚えて来たんだ。前がどうだったかは知らないが今はそんなことをしなくてもいいんだよ」
なるべく平静を装って告げる。水面のように波紋の揺れる目は見ないように努めた。
清光は一瞬すっと顔から色を無くすと、自分の着物の中から手を引き抜いた。体温が離れるのが惜しいと感じたが考えることはやめた。
「忘れた」
薄いくちびるから酷薄に吐き出された清光の言葉がどこか申し訳ない。
清光は着物の中から取り出したやり場のない薬指を躊躇いもなく咥えた。
「忘れちゃったからさぁ、主が全部教えてよ」
咥えたまま喋る声音に舌に、第一関節を通り越して骨まで甘くしゃぶられる。

兼さんと堀川にお小遣いを持たせて遠征に行かせたんだけど、心配なので二人の旅先での様子が知りたいです。

「国広ぉ」
「どうしたの兼さん」
「こりゃ本当に遠征か?」
「どうしてそう思うの兼さん」
「だってお前よぉ、遠征に行ってからというもの敵さんには会わねえしいく先々で団子食ってばっかだし、俺は退屈でおっ死んじまいそうだぜ」
「鶴丸さんみたいなこと言うね兼さん」
巾着の中の残金を確認しながら堀川は三本目の団子を頬張る和泉守を膝を軽く叩く。まだ和泉守に団子をたらふく食べさせてやれるだけの残金は十分に残っていた。
「主さんが遠征って言うんだから遠征だよ。もしかしたら兼さんの強さに恐れをなして隠れちゃったのかもしれないよ」
「そりゃ仕方ねえな」
和泉守はまんざらでもなさそうに残りの団子を一口で食べる。
「おっ、そうだ国広。俺たちそういやどこに向かって歩いてんだ?」
「うん?えーーーーと……、北の方角だよ。兼さん暑いの苦手でしょ」
「お前そんなので大丈夫なのかよ…」
堀川は地図を丸めて団子屋のくずかごに捨てた。自分たちの軌跡を辿れないところまで歩くにはあと24時間と少しで足りるだろうか。
審神者ごと火を放って出てきた本丸の焦げた臭いが今さら鼻を掠めて甘い。

DVを受ける人妻の燭台切をなんとかしたい大倶利伽羅ください

きっちり着込んだ服の下にひどい怪我を負っているのを知った。新しい青から古い黄色へとまだらに描かれたその模様からは常習性と異常性しか感じ取れない。
「見つかっちゃったな」
内緒にしておいてねと言われて思わず大倶利伽羅は手首を掴んだ。そこにぐるりと回された縄の目はまだ赤く腫れている。
「あいつか」
「他に誰が?」
自嘲するように笑った燭台切の前髪に隠れた右目の奥は肉の空洞で何もないことは知っている。事故だよと聞いていた。今はそれすら怪しい。あの男はおかしい。どうしてこうも苛烈な暴力を、手を上げなければならない。噛んだ自分のくちびるが震えているのを大倶利伽羅はようやく悟った。
「どうして倶利伽羅がそんな顔するの。優しいね」
「そういう話じゃないだろう」
もうやめておけ。どうして。どうしてって。言葉を多く持たない大倶利伽羅のくちびるは上手く音を出すことさえ出来ない。
「倶利伽羅が助けてくれるの」
燭台切の腕が倶利伽羅の首に絡みつく。背中を抱こうとして、痣のことを思い出し恐る恐る触った。
「お前が、光忠が、そうしてほしいと言うなら助けてやる…」
絞り出した声は無様に震えた。触った背中は骨が折れたまま固まったのかいびつな傾斜を描いている。
「優しいな倶利伽羅は」
あやすように背中を撫でられる。向こうから板間をぎしりと踏んだ、あまり大きくない足音が聞こえて燭台切は大倶利伽羅を抱いた腕を強めた。
「倶利伽羅は、上手にぶってね」
大倶利伽羅は抱いた燭台切の顔も見れず、後ろの殺気立った気配を振り向くことさえ敵わない。

大倶利伽羅の夢小説ください!

部屋は思ったよりもずっと綺麗だった。
物がないとは聞いていたがさっぱりとして清潔で生活感はほとんどなかった。意外だねと声をかけると大倶利伽羅はそうかと言葉少なに返事をした。
初めて訪れた部屋であまりじろじろ見るのも失礼かと思いあまり詮索することは止めた。何か淹れてくれるとキッチンに行ったので私は彼を待った。しかししばらくしても大倶利伽羅は戻ってこない。様子を見に行くと台所で何かを探していた。
「何かないの?どうしたの?」
「紅茶とかコーヒーがない」
「どこにしまったか忘れちゃったの?自分の部屋じゃない」
そう言うとちょっと恥ずかしそうな顔をしたので私は手みやげに持ってきた紅茶を淹れることにした。
大倶利伽羅は少し抜けているというか天然なところがあるからなあと意外に渋い琺瑯の白いやかんでお湯を沸かした。
「はい、どうぞ」
紅茶を渡すと大倶利伽羅はありがとうと言って恐る恐る飲んだ。彼は猫舌なのだ。
その時玄関の鍵が開く音がした。
「ただいま。あれ、倶利伽羅お客さん来てるの?」
玄関から男のやや甘い声がした。
私は大倶利伽羅とは趣味の異なる仕立てのいい白いシャツもお酒の飲めないくせに台所に置いてあった年代物のワインもイタリアの上等なオリーブオイルも、洗面所に二本置いてあった歯ブラシも一つのベッドに二つ置かれた枕も、何も知らないし何も見ていない。
大倶利伽羅のおかえりを聞く前にここから消えてなくなりたい。
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お、オムライス

オムライスが食べたいと言うと燭台切はいいよと言った。
そもそも作るのはそう難しいものではないらしい。長谷部の肩を叩いてすぐにできるよと燭台切はそう言って本丸の台所へ消えた。
しばらくして空腹をそそる匂いに誘われて台所へ行くともう少しだから待っててと窘められた。まるで人の子のようで恥ずかしいと思った。
「お待たせ」
食卓に置かれたオムライスは、チキンライスの上にオムレツとケチャップが乗せられたもので長谷部が思ったものとは少し違った。
「これをどうやって食べたらいいんだ」
「それはね、オムレツを真ん中で割るんだよ。そうすると中が半熟だから、ふわっと開くんだ。見た目も綺麗だし僕はこれが好き」
燭台切に言われるがままにオムレツの真ん中にスプーンを差し込む。チキンライスの上に乗った形のよいオムレツが開き、中がまだとろりとした卵が覆うように開いた。
「昨日の長谷部くんを思い出すね」
長谷部は燭台切を見た。
昨日の戦だ。
相手の腹を斬った。致命傷には至らなかった。縦に斬ったそれは皮膚をぱっくりと開いてすぐ断面の禍々しい色を湛えた肉色と、どっと溢れた赤黒い血液があった。長谷部はスプーンを握ったままでそれを思い出す。目の前には差し込んで開いて割ってなお、目の眩むような黄色がある。
「笑ってないで早く食べてほしいな。冷めちゃうから」

スパコミ原稿はいかがですか。あと荷造りはお早めに。

スパコミの原稿は早く取り掛からないと刀が出ない
荷造りすでにしたくないよー!

DJ燭台切のホモなやつ欲しい

クラブにも音楽にも燭台切がするというDJとやらにも、さほど興味はなかった。
チケットは倶利伽羅が来てくれたら嬉しいなという言葉と共に燭台切に強引に握らされた。
仕方がなく足を向けたそこはやかましい音楽とアルコール、煙草や香水の甘たるい臭いが充満していて、やはり来なければ良かったと大倶利伽羅は後悔していた。
到着が遅かったせいか、燭台切の出番はほとんど終わっていた。よく分からないカクテルを飲みながら、遠くで壁にもたれた。音が大きすぎるせいで、言葉も音楽も右から左だ。フロアで好き好きに踊る女たちは皆燭台切を熱っぽい目で見ている。昔から燭台切はとにかく何をするにしても人目を引いていたが、大倶利伽羅には女たちが音楽を聴いているのか燭台切の見ているのかの判断はつかなかった。
出番を終えた燭台切が大勢の女たちに囲まれる。帰ろうとしたら、目があった。構わずに歩みを進めると、倶利伽羅!と後ろから声をかけられてバツが悪くなる。女たちをかき分けるように倶利伽羅の元に来た燭台切は、来てくれるなんて思わなかったと嬉しそうに目を細めて笑った。
いつから来てたの。…さっき。何か飲む?…いい。お腹すいてない?…すいてない。どうしても不機嫌な返答になってしまう。
「お前のことを待ってるんじゃないのか」
後ろを指差す。とりまきの女たちは大倶利伽羅と親しそうに話す燭台切が戻ってくるのをまるで忠犬のように待っていた。
「ねえ、僕が最後にかけた曲聴いてた?」
燭台切はそれには返事をせずに続けた。さっきよりも一段低くなった声のトーンとボリュームは、フロアの喧騒に掻き消されてしまいそうになって思わず大倶利伽羅は燭台切に顔を寄せる。
「セックスオンザビーチ」
燭台切の甘苦い声が耳たぶの淵を舐めた。鼓膜から頭蓋が溶けてゆく。
ふいに見た燭台切の隠れていない左目は、フロアの光彩を吸ってなお黒々と光った。
「…知るか」
どうせ知っていても知らなくてもそれはどっちでも構わない。
ともほとんど水のようなカクテルを舐めている舌は、あと五秒もしない内に目の前の男の口の中で溺れる。

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大正Kの連載お願いします

痩せぎすの青白い身体は華族というには余りにも貧相で不健康だった。秋山は決して安くはないカップに紅茶を注ぎながら、裸の足を投げ出してソファに座る伏見を見る。
「なんだよ」
「いえ…別に…」
宗像は名の知れた小説家である。秋山はその屋敷に下宿している書生だ。その屋敷に最近頻繁に訪れるのがこの伏見であった。年の頃は秋山よりも少し下だろう。この辺りでは知らぬ者のいないほどの有名な家の出だ。
挙句に若く美しい父親はひどい変わり者で阿片を吸い散らかしているだの、男女関わらず自堕落に遊び惚けているだの悪い噂には事欠かなかった。一度伏見本人からあの噂全部本当だぜ、と耳元で囁かれてぞっとした。そう言った伏見の顔はその父親に瓜二つで不気味なほどに淫蕩であった。
その伏見をやけに気に入って手元に置いていたのが、この小説家の宗像だ。同人誌を多数発表し、確かな筆致と骨のある内容、そして美しい容姿に文壇は新星登場などともて囃した。本人はそういった評価にあまり興味がないのか、あまり表に出ることもなく生活のほとんどをこの屋敷で過ごす。来客を始め外界とのやり取りはほとんどが秋山の仕事となることになっていた。
「センセー、秋山さんが俺のことを助平な目で見まーす」
「なっ…!!!違います!!!」
伏見はからかうようにくちびるの端を上げると裸の足をゆっくりと組み替える。寝巻き代わりに着ているあの絹の着物だって安いものではない。書生の秋山など月賦ですら買うことが出来ないだろう。
「おや、そうでしたか」
伏見のことを宗像が先生などと呼ぶときはあまり機嫌が思わしくない時だ。宗像はソファに沈む痩せた身体の横に座ると、不健康な色の足をさすってから喉元を猫にでもやるようにくすぐった。
「あんたも俺とセンセーと三人でやりたいの」
伏見がわざと無防備に開いた足の間には下穿きははかれていなかった。舌なめずりをしたくちびるの薄さが空々しくいかがわしい色を湛えて秋山を飲み込まんとしている。
「破廉恥な!!」
紅茶のカップが音を立てるのも構わず秋山は部屋を飛び出す。
「あまり秋山くんを苛めるものではありませんよ」
閉めた分厚い扉から、宗像のまんざらでもなさそうな声がしている。

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