お題:水銀ゴースト:いやしけいでここはひとつ

池永マサモト

けはじっと様子を見ていた。その人間は、細長い棒を腋の下に差し込んで、その結果を見てため息をついていた。あの棒はなんだろう、あんなに嫌そうなものならきっと悪いものなんだ。
けは人間がいなくなったあと、ぽふんぽふんと跳ねて近づき、放り出されたその棒状のものを手……はないので体に包み込んだ。細かい目盛りがついていて、中に銀色のものが見える。けにはよく分からなかったが、これはよくないものだと勝手に判断した。ばりばりと齧って食べてしまった。
体温計の中の少量の水銀が、けの体を侵食していく。金属とは古来、妖精が忌み嫌うものとされていた。その中でも水銀は、常温で液体という特徴から、錬金術を始め工学の象徴とも言える。そしてワインの防腐剤などに使われ、数多の中毒者を出し命を奪った毒としての面も持つ。
けの穏やかで優しそうだった目は釣り上がり、ギラつく凶暴な光を放っていた。暴れたい、壊したい。人間を困らせてやりたい。どうして今まで、あんなにおとなしくしていたのだろうか。もっと自由に、好きに、欲望のままに、振る舞っていいのだ。
こうしてけはグレムリンと化した。
----
水銀といえば錬金術、じゃあけが賢者の石になってしまうとかどうだろうと思いついたけど話が全然広がらないし収束もしないので諦めた。

View more

About あーるでぃー:

日々適当。

そのへん