お題:絵画 ゴースト:侵されざる黒

「美術の授業でさ、人物画を描くってのが来週からあってさ」
「ありがちですわね。いいじゃありませんの、友人を描いておくのも将来の宝となるものですわ」
_世間話のような話題に対し、クロツは頭を抑えて悩んでいるように見える。誰を描くかで悩んだりしているのだろうか。
_とりあえずこちらも同じようにヘレナに話を合わせておく。
「そうかもしれねーけどさ、実はお袋にバレちまってるんだよな」
「……なるほど、エルナのことだから、額縁をもう用意してるのでしょうね」
「おう……。気が重いわ」
_クロツの母の溺愛ぶりを思い出して、ああ、と思う。きっとクロツもまた人よりは長く生きるのだろう。それは母エルナも然りである。まだ物心つく前の絵なら笑って済ませられるが、高校生時代の絵などというのは黒歴史そのものでしかないだろう。今後何百年も厳重に保存されたりするのではたまったものではない。
「どうしたもんかな、さすがに今から練習したところでうまくなれる気がしないしな……」
「エルナは坊ちゃんには絵の才能があるって今でも信じてますわね」
「げ、何年前の話だよ、いい加減忘れてくれねえかな」
_はあ、と溜息を付くクロツになんと声を変えて良いものやら。
_こめかみに手を当てて苦悩するクロツの横で、ヘレナは半分笑いながら大仰に肩をすくめてみせた。いつもの家族団欒だから放っておけということだろうか。ヘレナに笑みを返すと、良い機会だから苦悩したまえとクロツに上から目線で心の中でアドバイスを送っておいた。
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エルナさんは秘密のクロツコレクションとか持ってそう。マテウスコレクションもありそう。

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