@tiseda

伊勢田哲治

学会誌も電子書籍化して価格高騰を抑えましょうよ!

それは日本の学会誌を電子版オンリーにして学会費を安くしよう、というご提案でしょうか。他分野の懐事情はわからないので哲学系の話をします。
たしかに日本の哲学系学会の支出の大半を出版費が占めていて、いろいろな学会で学会誌をどう安くあげるかが問題になっています。学会誌をいっそ電子化したらその悩みも解消して会費も安くできそうですよね。
他方、学会誌をもらう権利こそが学会の会員でいつづける理由だという会員も多いことが推測されます(というか実際そういう発言はあります)。仮に学会誌が電子化されると、退会者が大量に出て学会の存亡の危機になることも考えられます。また、それとセットになって、学会誌を出している出版社との間に長年築いてきた関係を軽々しく壊すことはできない(出版社の側からすればほとんど儲けにならない価格で高品質なサービスをやってもらっているのだから等)、といった理由も上がります。以上のような理由により、完全電子化どころか、学会誌の印刷のクオリティを落とすことにもかなり抵抗が存在します。
例外的に、応用哲学会は、創立以来電子版のみで学会誌を出し、会費もそれに見合う形で格安に設定しています。会誌に対する対価ではなく、大会やサマースクールなどの会員サービスの対価として会費を出してもらうという運営モデルです。紙の会誌がなくても学会が潰れたりはしない、ということは示せたかとは思います。しかし財政状態をみると、けっして運営が軌道に乗っているとはいえない状況です。

Latest answers from 伊勢田哲治

博士課程に進学して研究者として生きていきたいのですが、人文系縮小でますます厳しくなっていくのでしょうか?

大学があり授業がある限りはだれかしら雇わないといけないわけで、教えながら哲学の研究をするというポジション自体は残っていくとは思います。ただ、漠然と自分の好きな研究だけしていれば評価されるというわけでもありませんし、どういう人がどういうところに採用されたかみたいなことを見て、早いうちから研究者としての生存戦略を考えるみたいなことは必要になると思います。「そういう小賢しいのがいやだから研究者を目指したのに」という人にとっては大変生きにくい時代になっていると思います。
哲学業界としては優秀な方たちにあとを継いでいただかないと先細りになっていくので、能力のある方には哲学の研究者を目指してほしい反面、とても「どんどんおいでください」と勧誘できる状況でないのも事実で、苦しいところです。

ぼかして聞くけど、米国のSTS研究者も日本のSTS研究者と似てる印象なの?

英米のSTS業界は、まず科学社会学のけっこう大きなコミュニティがあって、そこに隣接領域のひとたちがどんどん合流して成長してきたものだと理解しています。そのため、今でもアクターネットワークとかの社会学の理論がバックボーンとして共有されている印象はうけます。日本のSTS業界はそれと比べると寄り合い所帯ですし、実践よりだという気がします。すべて印象論ですのであまり重きをおかれても困りますが。

「メタクリティカルシンキング」とはどういうものですか?または、どういうものを構想されてますか?

『科学技術をよく考える』で紹介しているほか、「科学技術社会論とクリテイカルシンキング教育の実り多い融合は可能か」という論文の最後の方でも論じていますのでごらんになってください。
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/153277

思考プロセスのモデル化について。ご回答ありがとうございます。大変参考になりました。認識論的な議論は確かに認知科学の方が良いのかと思いました。重ね重ね申し訳ございませんが、トゥールミン『議論の技法』のような類の研究はご存知ですか?漠然と(広義での)分析哲学で展開されてないかな?などと思っています。

お探しのものはもしかしてインフォーマルロジックと呼ばれる分野ですか?
Informal logicとかargumentationとかのジャーナルがあります。
Informal Logic
http://www.informallogic.ca/
Argumentation
http://link.springer.com/journal/10503

道徳的に邪悪な哲学者って誰ですか?

たとえばシンガーはある条件下で重度障害を持つ新生児の安楽死を許容するような発言をしたりしているので邪悪な哲学者とみなされることが多いですね。

科学的議論での論理展開の正当性や人間の操る諸概念がどのような推論を許すのかという問題に関係しないとすれば、学者が提示する形式体系は何に使う物なのでしょうか?

伝統論理学でいえば推論の絶対的な正しさを保障してくれるような推論を同定することでしょうし、現代論理学はもっと記述的にわれわれが実際に行っている推論のある側面をどうモデル化するかというようなことを扱っていると思います。

伊勢田先生って右翼ですよね

右利きの猫でも左利きの猫でも、倫理的に望ましい社会を作る猫はよい猫だ、という立場です。それぞれのイデオロギーにコミットしている人からは日和見主義に見えるに違いありません。

シンゴジラはご覧になりましたか?

みました。いろいろポリティカルな読み方をする人がいてネット上でも議論になっていましたが、もっと素直に波動砲発射シークエンスだけで一本映画とっちゃいましたみたいな見方をしてあげるべき作品のような気がしました。

大学受験は余裕でしたか?

客観的には余裕かましているとみられる受験のしかたをしましたが、本人がよくわかっていなかっただけだと思います。

何歳まで生きたいですか?

そういえば具体的な年齢でイメージしたことないですね。

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