大好きな本、大切な人に薦めたい本、薦めたくはないけど大切にしている本をそれぞれ教えてください。
本に関するご質問は、お答えした後に必ず「ああ言えばよかった」と後悔するのが常で、ちょっとためらうところがあるのですが、勇を鼓して書いてみます。
大好きな本、今日はオラフ・ステープルドン『スターメイカー』にしましょう。五千億年にわたる宇宙の歴史を描いた、「耐え難いほど壮麗」と評される作品。幻想的でありながら硬質なイメージの展開がたまりません。同じ作者の『オッド・ジョン』『シリウス』も名作です。
大切な人に薦めたい本は、荒川洋治『日記をつける』。散文なのにどこか詩を読むようで、詩人の書く文章はふつうの文筆家のそれとは違うものだなあとしみじみ思わされます。
薦めたくはないけど大切にしている本。薦めたくない理由ってどういうものがあるかな。こんな本を読んでいることを知られたら恥ずかしいっていうことだったら、どんな読書もそうですし。
これを読ませたらこっちの世界に帰ってこなくなるかも、と心配するのも余計なお世話ですものね。
薦めてもあまりお役には立たないかなあという意味で思いついたのが、『説文解字』。後漢のころに成立した最古の字書で、字(漢字)の意味や成り立ちを説いたものです。発音も書いてある。そして、この本から部首だてが始まります。
漢字の国の人間にとってとても大切な本ですが、ただ、漢文ですし、独特の読み解き方があるので、ひとりで読めるようになるには何年かかけて訓練せねばならず、大学受験に出てくる漢文が難なく読めるような人でも、ちょっと歯が立ちません。しかも、現代の英語やフランス語などの外国語と異なり、訓練の場もなかなか見つけられないという難点があります。
加えて、引用してある各種古典にあたらないと文意がとれないことも多々あり、読解にたいへん時間がかかります。これを人に薦めるほど、私は悪い人間ではありません。だから薦めたくはありません。
ひとつの文字の背後にはひとつの世界が広がっています。『説文解字』は文字を通じて一種の世界観を開示しています。その本を開き、語釈の文章を読み解く作業には、さまざまなアイデアや想像力が必要となり、たいへん愉しい。大漢和辞典の誤りなども見つけられますしね。今はめったに開くこともありませんが、大切にしている一冊です。
大好きな本、今日はオラフ・ステープルドン『スターメイカー』にしましょう。五千億年にわたる宇宙の歴史を描いた、「耐え難いほど壮麗」と評される作品。幻想的でありながら硬質なイメージの展開がたまりません。同じ作者の『オッド・ジョン』『シリウス』も名作です。
大切な人に薦めたい本は、荒川洋治『日記をつける』。散文なのにどこか詩を読むようで、詩人の書く文章はふつうの文筆家のそれとは違うものだなあとしみじみ思わされます。
薦めたくはないけど大切にしている本。薦めたくない理由ってどういうものがあるかな。こんな本を読んでいることを知られたら恥ずかしいっていうことだったら、どんな読書もそうですし。
これを読ませたらこっちの世界に帰ってこなくなるかも、と心配するのも余計なお世話ですものね。
薦めてもあまりお役には立たないかなあという意味で思いついたのが、『説文解字』。後漢のころに成立した最古の字書で、字(漢字)の意味や成り立ちを説いたものです。発音も書いてある。そして、この本から部首だてが始まります。
漢字の国の人間にとってとても大切な本ですが、ただ、漢文ですし、独特の読み解き方があるので、ひとりで読めるようになるには何年かかけて訓練せねばならず、大学受験に出てくる漢文が難なく読めるような人でも、ちょっと歯が立ちません。しかも、現代の英語やフランス語などの外国語と異なり、訓練の場もなかなか見つけられないという難点があります。
加えて、引用してある各種古典にあたらないと文意がとれないことも多々あり、読解にたいへん時間がかかります。これを人に薦めるほど、私は悪い人間ではありません。だから薦めたくはありません。
ひとつの文字の背後にはひとつの世界が広がっています。『説文解字』は文字を通じて一種の世界観を開示しています。その本を開き、語釈の文章を読み解く作業には、さまざまなアイデアや想像力が必要となり、たいへん愉しい。大漢和辞典の誤りなども見つけられますしね。今はめったに開くこともありませんが、大切にしている一冊です。
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平田有