法と道徳を切り離す考えのことを法実証主義というそうですが、そのような試みにどのような意義があるのでしょうか?

.それこそ今度、新訳が出たハート『法の概念』の主要テーマのひとつなので、ぜひご覧になってみてください。もちろんいろいろな考え方があるんですけど、私としては「何が法か」が少しでもわかりやすくなるのが大きいと思っています。道徳と法の区別があいまいだと、道徳というのは人によって違う部分がどうしてもあるので、何が法なのか判断しづらくなってしまうからです。それに対し、議会での議決を経て公布されたもの、といった具合に事実レベルで判断できるものとして狭く法を考えておけば、(少なくとも道徳よりは)法の内容がそもそも何なのかで意見が対立することは少なくなります(その法が「よい」ものであるか、従う「べき」であるかというのは別問題です、というか別問題にするためにそうするわけです)。
.どんなことをしたら逮捕されたり法的な不利益を受けるのかが前もってわかりにくいようでは自由な行動もできません(予見可能性)。また今後、法を改正していくにあたってどういう問題があるかを考えるのに、そもそも現在、どういうものが法として通用しているのかが明確でないと議論がしにくい(批判可能性)といったことがあります。法実証主義が法と道徳を分離するというのは、それがどの程度とかいろいろあって難しいですし(ドイツ系の法実証主義だとさらにぐちゃぐちゃになる)、あまり簡単にまとめるのもよくないんですが、とりあえずはそんなとこです。

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